至兼の、メヒコに完敗(乾杯)

メキシコでの日々、身の回りに起きた色々なことを紹介し、
メキシコをより身近に感じていただければ幸いです。
どうぞよろしくおねがいします。

ー乗り物編ー キョロちゃんはウソつかない

 メキシコにも梅雨がある。雨期なんて言うのだろうか。ちなみに梅毒はアメリカ大陸発祥らしい。。。そんなことはどうでもよい。雨がふると自然とバスよりタクシーに乗る機会が増える。これはある雨の日、タクシーを捕まえた時のお話。
 タクシーを捕まえようと、道で待っていると遠くから空車のタクシーがぼくの方に近づいてくる。そのおんぼろっぷりと言ったら遠くから見てもお見事で、はがれた塗装、その黒ずみっぷりは正に逸品。正直気が進まないビジュアルである。その車の名前を”ボチート”。日本では”ビートル”という名称でよばれているこの車。僕がメキシコに来たこの頃は、まだまだ現役で町のいたるところでこのタクシーを見かけることができた。
 ただ雨も大降りになってきて、もう背に腹は変えられない。ビジュアルが悪いといっても、タクシーなんてたかが数十分。覚悟を決めてこいつに乗ろうと、右手を挙げてタクシーを止める。歴史と危険を感じさせるエンジン音と共にぼくの前に止まるタクシー。乗車側の窓にはメキシコ人にしては珍しい、ハゲあがったおじさんのタクシーライセンスが張ってある。写真を確認後、ドアを開けてまず異変に気付く。。。
「この男、、、剛毛につき。。。」
 ぼくの目はハゲあがったおっさんを覚悟していたのに、目の前に現れた、剛毛長髪天然パーマの運転手。ぼくの目はそのギャップについていけず、数秒間目がチカチカしていたのを今でも覚えている。しかーーし、雨足は強くなる一方で、もう乗り込むしかなだそうだ。運転手に目的地を伝えると、頼りない返答。
「ちょっとこの辺分からないから、道を教えてくれ」
怪しい。。。怪しすぎる。。。だが、もう賽は投げられた。。。出発した今、今さらタクシーは降りられない。しょうがない。結局ぼくが道を説明しながら目的地まで連れていくことに。。。道中の会話はよくはずんだ。なぜなら、運転手にとって、初めての日本人がぼくだったから。ただ、よくわからないのが、彼の発音。もう感覚的にメキシコシティー出身じゃない人というのはなんとなくわかった。。。しかし発音が悪いのは、お互い様。なんなら僕のスペイン語は間違えだらけである。彼には適当に知りもしない寿司の作り方も伝授。ぼくの色んな意味でつたない説明に興味津々の運転手。そんなこんなで、ぼくの説明のお返しにと、おすすめのメキシコ料理を運転手に聞くと、衝撃の返答。
「俺、ホンジュラス人だからメキシコ料理わかんないわ。。。。先週メキシコに着いたんだよ. ハハハーーー。」
 この人は正直者だ。ちゃんと自分がメキシコ人じゃないと教えてくれた。続けて質問。

「このタクシーは?」
「友達に借りてるよ!!ハハハハハハハハハハハハー」
 この人は正直者だ。。。正直すぎてウソつくと目がキョロキョロキョロキョロ。見事に視点が合ってない。大笑いと、キョロキョロの裏に 
~この車盗みました!!~
の答えアリ(私の個人的な予想です。) 快適なサービスをありがとう。キョロちゃん。


ー乗り物編ー さ、三連単

「あそこの角で待っていれば、大体15分に1台30番のバスは来るからね。わかった?」

引っ越し完了の日、僕に教える大家さん。

 翌日、早速バスでお出かけ。30番のバスで目的地までダイレクトに行ける。心を踊らせバス停(と呼ばれている、十字路の一角)へ。その角に立つこと数分。まずは近所の犬連れマダムの洗礼を受ける。

「どこへ行きたいの?あーそう。なら30番ね。30番のバスは15分に1本よ。あら、あなた、中国人?? あーー日本??北京語を、話すのね????え??日本語??ふーーーん。そうなの??まぁ15分待ってればバスは来るからここで待ってなさい!!#!=××%//$$%;¬¬¡¿©¤ΩฯГ¡¡%=÷!&_€_?&\€:=(意訳)。」

重量感のある会話の餌食に。その後角に立つこと15分。。。30番はまだ来ない。でもこんなものは、覚悟のうち。こんなことじゃぁ、僕は折れない。だったここはメキシコだもの。。さらに僕は角に立つ。すると、今度はバス停前のジュース屋が声掛ける。

「おい、若いの!!おめーどこいくんだ??あーそーかぁ。それなら30番だな。。15分待ってろ。そしたら来るわ。。#&@¤μ§^¡¥฿₹៛₪θΩΩθ#??€£(意訳)。」

ただただ、パンチあるアクセントに大苦戦、、、。その後19番は通ったが、30番は一向に来ない。ジュース屋オーナー、いつしかどこかへ消えてった。。それでもぼくは知っている。想定内の30分待ち。15分に1台って何??。。。そんな文句を言っちゃいかん。それがメヒコのローカルルール。自分自身に言い聞かせ、辛抱強く角に立つ。。。

それから、さらに15分。はるか彼方に、一筋の光。角からついに30と、書かれたバスの発見に至る。連なるバスを押さえ込み、最初に来るのは30番。待ちに焦がれた30番。ゆっくりしっかりこちらに近づく。僕のテンション最高潮。ここで心中の実況が始まる。

「先頭は30番だ!!世界のメキシコバスファンよ、見てくれ!!これが、メキシコ近代バスシステムの結晶だ。30ばんんんん。。。。大外から足音も軽やかに30番と運転手!!一冠達成!!勝ち時計は45分3秒6。。。実に19番以来、21分ぶりの無敗の一冠バスの誕生であります。」

往年の名実況にバスをだぶらせ、待ちに焦がれたバスの到着。心も気分もディープインパクト。念のための2着の確認。。。おおおおおおおっと、衝撃が脳天直撃。2着もなんと30番、2着もなんと、30番。ここまで来たら、期待を込めて、さらに行う3着確認。。。。。でたでたやっぱり30番。期待通りの30番。3連単で30-30-30。これが、メヒコ、近代バスシステムの結晶。よーく見ておけ、世界のメキシコバスファンよ!!



みんなが言ってた15分

実際待つこと45分。

角に立つこと45分。

45分でバス3台。

平均すれば、15分。

15分に1台、バスは来た。。。。


ものは言いようで角が、、、立たず(笑)。。


ー乗り物編ー ジェントルマンの教え

 メキシコの都市部は知らないが、メキシコの田舎に住んでいると、宗教が人々の暮らしと密接に関係しているように感じることが多い。特に日曜日のお昼には、家族みんなで教会へ行く姿や、教会でお祈りしているメキシコ人の姿をよく見かけることができる。そんなある日の日曜日。お昼のミサの時間帯、ある路線バスに乗車したときのお話。
 乗客は僕と、ジェントルマン風のおじいさんの二人。この時間はいつも乗客がいないし、交通量も極端に少ないので、個人的にはよく使う。その日も無人のバス停に、車の少ない田舎道。ノンストップで走り抜ける二人を乗せたおんぼろバス。目にも留まらぬスピードで、あっという間に目的地に到着するように思えた。 ところがやはり、ここはメキシコ。ある交差点についたとき、事件は起きた。青信号にも関わらず、おんぼろバスは、突如ストップ。ストップするなり運転手、無言でバスから飛び降りて、そのままどこかへ消えてった。数秒足らずの出来事に、頭を巡るクエッションマーク。何をしていいかわからぬこのもどかしさ。。。徐々に深まる不安感。その時気づいたある事実。そうだ。このバスにはもう一人乗客が。何が起きたか、教えをこおうとそちらに目をやる。ヘルプミーおじいさん。。。目と目があって、二つの心がつながるテレパシー。彼は頷きながら僕の心にこう語った。
 「ほっほっほっ。。。ジタバタしなさんな。(想像)」
その後、ゆっくり目を閉じて、眠りにつくご老体。寝たら何も聞けんじゃないか。。。「こ、このクソジジイ!!」何度も連呼した心の中。それでも感じた、郷に入れば郷に従え。とりあえず、納得いかないが、クソジジイを真似して、僕も目を閉じ睡眠開始。。。。
 
 それから、何分経っただろう。時計を見ると、時計の針が進むこと約15分。満面の笑みで運転手が帰還した。笑顔で席につく運転手。その右手にはコカ・コーラを掲げ、左手にはハバネロ味のポテトチップス。。
「よし、じゃあいこう!!」
ポテチ片手に、出発告げる運転手。
 気にするだけむだだった。心配なんてしちゃいかん。ジジイ、、、いや、おじいさん、、、もとい、ジェントルマンの教えの通り、寝ていてよかった15分。そのジェントルマンは、出発を確認し再度頷きながら再び眠りに入るのであった。。。ジジイと言ってごめんなさい。あなたの教えは忘れない。
 
 あせりは禁物。何があっても、不動の心で。。。BY ジェントルマン