至兼の、メヒコに完敗(乾杯)

メキシコでの日々、身の回りに起きた色々なことを紹介し、
メキシコをより身近に感じていただければ幸いです。
どうぞよろしくおねがいします。

ー乗り物編ー二里霧中

 ある、日曜日。ぼくはローカルバスに乗って、温泉へと旅立った。僕の家から大体8キロの距離に、温泉がある。お湯はちょっとぬるいけど、疲れをとったり、リフレッシュをするのには、本当に最適。シャワーしかないぼくの家なので、温泉は本当にありがたく、いつも重宝いている。その日も19番のバスに乗り、あとは、到着を待つのみ。バス一本で浴場まで連れていってくれる。なんて便利な、バスなんだ。自分の家の立地条件に心から感服。
 ただ、今日のバスはいつもと違う。座席について外をボーっと眺めていると、異変に気付く。3車線の道路、次の信号で左に曲がらなくてはいけないバスは、いまだに一番右の車線を走っている。おかしい、、おかしすぎる。。でも、他の乗客は、、、おしゃべりに夢中で誰も気が付いていない。外国人が、バスの運転手にルートを教えていいものだろうか。。。自問自答してみる。もちろん、となりの超ローカルおじさんも、気づいていなかったのだが、、、やっと左折地点の数十メートル前で気付き放つ一言。
「おい!!若いの!!この先を左に曲がらないと、ルートから外れるぞ!!」
その後、バスにこだまする乗客からの「左、左」という単語の数々。それを受けて運転手。
「あ、、、このルート初めてだから知らなかったよ!!あそこを左だね??」
 え???乗客たちを襲う不安。
 急遽、左折のため左にハンドルを切る運転手。。。このタイミングで、右車線からの左折を断行するには、この場所から直角に左方向に曲がるしかない。すると、運転手以外の乗客みんなが心配していたことが、やっぱり起こる。左折のための信号は、タイミングよく赤になってしまったのだ。曲がろうにも曲がれないバスは、そのままストップし、数分間のあいだ、3車線の道路にふたをし続けた。インスタント渋滞の出来上がりである。。。外で始まる、お約束のクラクションの嵐。交差点は瞬く間に、メキシコサッカースタジアム応援席に変身した。。。一方車中は外からの飛び交うヤジ、怒号、クラクション、なんてなんのその。真剣10代~60代、しゃべり場状態で、外の茶番はどこ吹く風だ。。。乗客の中で恐らく僕だけが待ちに待った青信号、と同時にバスは直進し、ようやく左折完了。個人的には人生で一番長い左折を経験したのだが、他の乗客はあまり気にしていないようだった。。。だって、おしゃべりに夢中なんだもん。 
 僕のとなりに座っていた、超ローカルおじさんは運転席の横へ行き、バスルートのガイドを始める。ただそれも、おじさんは誰かと話したかっただけで、会話に夢中の運転手。前をみなさい!!。。。ただ、おじさんが下りるまでの十数分は、本当に平穏なバスだった。
 おじさんが下りると、運転手はその場にバスを止め、携帯電話片手に他の乗客と共にこのバスの終着点ををナビに登録。その後、即席授業という名のおしゃべり大会も実施。最後に口頭でのチェックテストを経て、無事合格した運転手と共に再出発の運びとなった。この間およそ10分強。乗客たちは、何一つ文句を言わずに、ただただ、夢中にだべり続けていた。
 ついに、待ちに待った出発進行。しかーし、あれだけみんなからレクチャーを受けた運転手は、人のやさしさより文明の利器携帯のカーナビをリスペクト。愚直なまでに携帯からの指示に従い続け、ルートを外れ、バス停を無視し。。。もう、やりたい放題の運転手。。バスのルートと、カーナビのガイドが、一致してるわけないじゃないか!!と突っ込みたくもなるのだが、乗客は文句も何も言わず、永遠に続く夢中なおしゃべりタイム。
 結局無事に、温泉には到着したものの、目的地に着けるかどうか心配で、疲労困憊だった僕。ただ、極度の緊張からの、入浴はリラックス効果抜群で、心も体もリフレッシュ。全てがいつも結果オーライ。なんてぼくは、ラッキーなんだ。
 8キロのあいだ、バスルートの手掛かりがつかめなかった運転手。
 8キロのあいだ、終始おしゃべりに夢中だった乗客たち。。。。
 運転手は「二里霧中」、乗客達は「二里夢中」。むちゅう違いであら不思議。。。


 夢中でいられるって、すばらしい。あなたはどっちの「むちゅう」を選ぶ??

ー乗り物編ー 早期帰国を決めた日

メキシコに来てから、2ヶ月が経過。ようやく生活にも慣れてくる。その日も、いつもの通り6時に起床。これもまたいつもの通り6時半くらいのバスに乗り、職場へ向かう。その日も日常何ら変わらない、朝から平凡な、そして淡々とした生活を送る、、、はずだった。

バスに乗り込み、数分し、最初の異変に気が付いた。その日のバスは、バスだけに、飛ばす飛ばす、ランディー・バース。いつも以上のスピードに、驚きながらも、あら不思議。通勤時間の短縮に、自然と心が踊りだす。いくつか、バス停無視をして、ノンストップで爆走する。


乗車してから数分後、となりの車線から(内側の車線)もう一台のバスが登場。。。猛烈果敢に抜きに来て、こちらのバスも負けじと応戦。2台によるストリートレーシングカーアクション。数分間の壮絶なバトルに、乗客も熱くなる、熱くなる。一人を除いて、、、(ぼくね。)

熱気が最高潮になったころ、事件が起こる。「ゴチ」っという鈍い音。直後に2台がその場に停車。第一ラウンド開始のゴング。双方まだまだ熱くない。笑いながらの口撃と、大人の余裕をみせあう紳士。でも、この人たちはしょうがない。。。この人たちは、紳士じゃない。紳士はあんまり、サッカーのユニフォームは着ない。本性隠した数十秒後に、たまらず飛び出し、ミラーを指差す。数秒間の沈黙後、第二ラウンド開始のゴング。(速っ)

2車線道路に2台のバスが、並列駐車で止まってる。場所なんてお構い無し。その場で戦うファイターと、それに群がる野次馬達。バスの後ろに迫るのは、長蛇の列の車達。やまない雨はないはずなのに、クラクションは鳴りやまない。。。メキシコの、男と男が生みだした、何にも勝るプライドと、ボロボロの、サイドミラーの弁償を、拳と拳で語らう二人。絶対に負けられない、戦いはそこにはある、、、

数分間の決闘後、我にかえった(かどうかは知らないが)二人は帰投。乗客たちの反応は、はちきれんばかりの拍手と喝采。そうして、とうとう最後には、WE ARE THE CHAMPIONSを、合唱したとか、しなかったとか。。。


(僕はこの日、早期帰国を決意した。)


ーはじめにー

「ピーピーピー」

交差点で止まる度、こだまする口笛の音。音の発信源は運転手のホセ ルイス君。2009年8月1日、僕はメキシコに降り立った。それから数十分後、お迎えのホセ ルイス君の隣に座り、口笛を聞くことしかできない僕。。。

この人、大丈夫なんだろうか?頭いっちゃってんじゃないだろうか?なんなんだこのテンション??こんな人たちとわかりあえるんだろうか??

新生活への希望は、となりの男のピーチクパーチクによって、すべてかき消されてしまったわけだが、あら不思議。そんな不安が消えるのも、時間の問題。十字路で止まる度、立っているわかーいギャルにむけて口笛を吹き、その娘を指さしながら何やらぼくに同意を求めるホセ ルイス君。うん、、、もちろん僕は、スペイン語なんてしらないし、何を言うかもしらないけれど、君の気持ちが、よくわかる。。。だってぼくたち人間だもの。女性の前では、みんな平等。僕らはいつも以心伝心。

それから、二人は各交差点で女の子を見つけては

「ボニーーター――」

と叫んでいた。。。

そう、僕が最初に覚えたスペイン語は「ボニータ」。もちろんその時は、まだ意味は知らなかったが、そこから、僕の「ボニート???」な日々が始まったわけで、、、、そんな話を少しづつ書いていきたいたいと思う。